やりたいことが沢山あるというのも考えものだ、と思う年末迫る11月の今日この頃。
9月に読んだ本にもかかわらず、こんな時期の投稿となってしまいました。
さて、そんな9月ですが、読了した冊数は30冊。
果たしてこんなペースで366冊読み切ることが出来るのか、自分自身甚だ疑問。
有言実行、成し遂げたいものです。
※2025年6月追記。
ようやく少し余裕が生まれて「さて、やるか」と開いてみたら、出てきたのは上記の文章。
もはや季節巡って、日々の暑さに一喜一憂する毎日だというのに……。
時の経過はなんとも無情、切ないものです。
なお結果だけ先にお伝えしておきますと、366冊は読み切りました。
中々まとまった時間が取れず、後半は短編作品ばかりとなってしまいましたが。
まあ、それでもいつか達成したいと思っていた物事を実現できたことは重畳。
残りの余生の中で、完全な1日1冊、読書生活。
いつか成し遂げられたらいいなと思うところです。
なお、今回の記事からAmazon等へのリンクは一旦削除しています(他の記事も順次)。
「表紙など確認できていいかな?」と思い作成していましたが、時間が無く。
更新の手間などもあり……。
そのためお手数ではありますが、気になる1冊がありましたら、ぜひ検索を。
青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)に収められているタイトルは、インターネット上で無料で読めます。
個人的にはkindle版が読み易かったです。
- 9月に読んだ本
- 『懐中時計』夢野 久作
- 『沙漠の花』原 民喜
- 『美男子と煙草』太宰 治
- 『知的財産権の基本の『キ』』nico@著作権マスター
- 『小説の面白さ』太宰 治
- 『飴だま』新美 南吉
- 『内田百間氏』芥川 龍之介
- 『知らなかったでは済まされない著作権の話(上)』堀越 総明
- 『「晩年」に就いて』太宰 治
- 『満願』太宰 治
- 『猫の広告文』夏目 漱石
- 『女体』芥川 龍之介
- 『酒の追憶』太宰 治
- 『織田君の死』太宰 治
- 『ピアノ』芥川 龍之介
- 『納豆の茶漬け』北大路 魯山人
- 『領民0人スタートの辺境領主様 VI 蒼穹の狩人』風楼
- 『領民0人スタートの辺境領主様 VII 旅宿の香風』風楼
- 『羅生門の後に』芥川 龍之介
- 『縊死体』夢野 久作
- 『辺境の老騎士2 新生の森』支援BIS
- 『辺境の老騎士3 バルド・ローエンと王国の太子』支援BIS
- 『檸檬』梶井 基次郎
- 『食物として』芥川 龍之介
- 『愛』岡本 かの子
- 『英雄の器』芥川 龍之介
- 『辺境の老騎士 IV バルド・ローエンと不死の将軍』支援BIS
- 『蒼穹』梶井 基次郎
- 『最初の苦悩』フランツ・カフカ
- 『妖怪年代記』泉 鏡花
- 最後に
9月に読んだ本
短編作品が多くなったこの月。
これまであまり好んで手に取って来なかった古い時代の作品の良さを知れたことは、結構嬉しく感じていることだったり。
ただ読書家の一人として「こんなにも短い短編を「1冊」と数えてもよいものか」という気持ちはあって……。
いつか完全な、自分が納得できる形での1日1冊生活を実現したいところです。
『懐中時計』夢野 久作
「人の見ない時だけか、又は人が見ている時だけに働いているものはどちらも泥棒だよ」
夢野 久作『懐中時計』青空文庫,2007年,p.1(kindle版)
ふと思いついて、メモ帳にさらさらとでも書いたような短編。
夢野久作さんといえば『ドグラ・マグラ』ですが、こういった文章も書かれていたのだなと思った1冊でした。
オススメできる人
- 夢野 久作さんの短編に興味がある人
- 数十秒で読み終わる文章に関心がある人
- 「上手いことを言う」と思える文章を読んでみたい人
オススメできない人
- 寓話は好みでない人
- 読み応えのある文章を欲している人
- どうせ読むなら長い時間楽しみたい人
タイトル | 懐中時計 |
著者 | 夢野 久作 |
出版社 | 青空文庫 |
『沙漠の花』原 民喜
私は私の書きたいものだけ書き上げたら早くあの世に行きたい。
原 民喜『沙漠の花』青空文庫,2002年,p.2(kindle版)
いつか掴みたい何かがあって、それを為すためだけに日々を歩き続けることの美しさ。
こういった生き方が、悔いのない人生という幕引きに繋がるのかもしれない、と考えさせられた1冊でした。
オススメできる人
- 人生の岐路に直面している人
- 何かを与えてくれる文章を求めている人
- 生涯をかけて為したいと思える何かを抱いている人
オススメできない人
- 物語を読みたい気分の人
- 短い文章は求めていない人
- 人の多様な考え方を許容できない人
タイトル | 沙漠の花 |
著者 | 原 民喜 |
出版社 | 青空文庫 |
『美男子と煙草』太宰 治
これでも、善行という事になるのだろうか、たまらねえ。
太宰 治『美男子と煙草』青空文庫,2002年,位置№,66(kindle版)
太宰 治さんが生きた日常を垣間見ることのできる1冊です。
どういった人物だったのかを感じてみたい人はぜひ。
オススメできる人
- 短編作品を欲している人
- 読み易い作品を探している人
- 太宰 治さんの人間性を感じられる1冊を読んでみたい人
オススメできない人
- 長編小説を求めている人
- フィクションの物語を欲している人
- 作者さん自身の事は知りたくないタイプの人
タイトル | 美男子と煙草 |
著者 | 太宰 治 |
出版社 | 青空文庫 |
『知的財産権の基本の『キ』』nico@著作権マスター
一人ひとりの節度ある行動が次の優れた著作物との出会いにつながるのです。
nico@著作権マスター『知的財産権の基本の『キ』』ツバサ出版,2023年,p.29(kindle版)
著作権などの情報をさらっと確認できます。
その手の知識を知りたい方にオススメです。
オススメできる人
- 平易な文体を好まれる人
- タイトルを見て興味が沸いた人
- 知的財産権についての知識をこれから得たいと考える人
オススメできない人
- 現状、必要な知識ではない人
- 小難しい内容を取り扱っている本は不得手な人
- 知的財産権について、一から十まで事細かに書かれた書籍を求めている人
タイトル | 知的財産権の基本の『キ』 |
著者 | nico@著作権マスター |
出版社 | ツバサ出版 |
『小説の面白さ』太宰 治
小説と云うものは、本来、女子供の読むもので、いわゆる利口な大人が目の色を変えて読み、しかもその読後感を卓を叩いて論じ合うと云うような性質のものではないのであります。
太宰治『小説の面白さ』青空文庫,2005年,p.2(kindle版)
上記の引用はこの本の書き出しになるのですが、現在との価値観の違いに驚きを感じました。
昨今の日本において小説とは、老若男女問わず誰も彼もが楽しむことの出来るコンテンツの1つ。
しかし、ひと昔前となると、このような認識。
この本1冊だけで考えを固めることは時期尚早ではありますが、少なくとも今の時代に生を受けてよかったなと感じる内容でした。
オススメできる人
- 短編作品をさらりと読みたい気分の人
- 今と昔の違いを垣間見ることのできる本に興味がある人
- さくっと読み終えることのできる短い文章を求めている人
オススメできない人
- 物語を欲している人
- 長編の作品を求めている人
- 昔の本を読むことは苦手な人
タイトル | 小説の面白さ |
著者 | 太宰 治 |
出版社 | 青空文庫 |
『飴だま』新美 南吉
「飴だまを出せ。」
とさむらいはいいました。
新美 南吉『飴だま』青空文庫,2003年,位置№27(kindle版)
ほっこりするお話です。
お子さんの読み聞かせにでもぜひ。
オススメできる人
- 優しい世界を感じたい人
- 短編を読みたい気分の人
- にこやかになれる物語を求めている人
オススメできない人
- 古い時代の作品は求めていない人
- ページ数の長い作品が読みたい人
- 人間の薄汚い部分を感じられる作品を求めている人
タイトル | 飴だま |
著者 | 新美 南吉 |
出版社 | 青空文庫 |
『内田百間氏』芥川 龍之介
僕は単に友情の為のみにあらず、真面目に内田百間氏の詩的天才を信ずるが為に特にこの悪文を草するものなり。
芥川 龍之介『内田百間氏』青空文庫,2008年,位置№13(kindle版)
芥川 龍之介さんが内田 百閒さんの本を熱く薦める短編作品です。
文豪が薦める作家さん。
どのような内容が描かれているのかと、同氏の著作に思わず手を伸ばしたくなる1冊でした。
オススメできる人
- 短い文章を求めている人
- 内田 百閒さんに興味がある人
- 誰かが誰かのことを称賛しているような文章が好きな人
オススメできない人
- 古い文章は不得手な人
- 物語が読みたい気分の人
- 読書を通じて、楽しさや愉快さを感じたい人
タイトル | 内田百間氏 |
著者 | 芥川 龍之介 |
出版社 | 青空文庫 |
『知らなかったでは済まされない著作権の話(上)』堀越 総明
つまり著作物は「表現したもの」でなくてはならないので、具体的に表現される前段階で、いくらしびれるようなアイデアを出して、クリエイティブな貢献をしても、著作者になることはできません。
堀越 聡明『知らなかったでは済まされない著作権の話(上)』
様々な事例が載っており「へーそうなんだ」と思える内容が満載の1冊でした。
知的財産に関する専門家である弁理士の方が執筆されている点も信頼できるポイントです。
オススメできる人
- 読み進め易い本を探している人
- 著作権に関する本を求めている人
- 著作権についての具体例が挙げられている本を欲している人
オススメできない人
- 物語作品を読みたい気分の人
- 著作権に関する情報を求めていない人
- 既に著作権に対する強固な知識を有している人
タイトル | 知らなかったでは済まされない著作権の話(上) |
著者 | 堀越 総明 |
出版社 |
『「晩年」に就いて』太宰 治
私の小説を、読んだところで、あなたの生活が、ちっとも楽になりません。ちっとも偉く なりません。なんにもなりません。だから、私は、あまり、おすすめできません。
太宰 治『「晩年」に就いて』青空文庫,2004年,位置№5(kindle版)
正直なことだ、と上記の文章を読み、感じた次第です。
ただ、この指摘はこれっぽっちも間違っていません。
どれだけ面白い本を読んだとしても、どれだけ感動する本に巡り合ったとしても。
お金がもらえるわけでも、地位が向上するわけでもないのですから。
しかし、それでも本を好む人は本を読む。
そこにきっと明確な理由などというものは存在しないのだと思います。
好きだからと単純な動機を除いては。
オススメできる人
- 本を読むことが好きな人
- 数分で読めるような作品を求めている人
- 太宰 治さんという人間を感じられる文章を読んでみたい人
オススメできない人
- 物語を求めている人
- 昔の本を読むことは不得手な人
- カップ麺が出来上がるのを待っている間に読み終わってしまうような短い作品は求めていない人
タイトル | 「晩年」に就いて |
著者 | 太宰 治 |
出版社 | 青空文庫 |
『満願』太宰 治
白いパラソルをくるくるっとまわした。
太宰 治『満願』青空文庫,2003年,位置№33(kindle版)
情景描写の美しさ。
まるで私が過去にその瞬間を目にしたような、そんな風に自然に頭の中に浮かび上がる光景。
「文豪って凄い」
シンプルにそう思える1冊でした。
オススメできる人
- 短編作品が好きな人
- 太宰 治さんの作品を読んでみたい人
- 何気ない日常の美しさを感じてみたい人
オススメできない人
- 分かり易いお話を好む人
- 最近発売されたような新しい作品を読みたい人
- すぐさま読み終わってしまうような本は求めていない人
タイトル | 満願 |
著者 | 太宰 治 |
出版社 | 青空文庫 |
『猫の広告文』夏目 漱石
吾輩は猫である。
夏目 漱石『猫の広告文』青空文庫,2003年,位置№2(kindle版)
「?」となったのが正直な感想です。
『吾輩は猫である』を先にしっかり読んでおけば、何か感じ方が違ったりしたのでしょうか。
オススメできる人
- 『吾輩は猫である』が好きな人?
- 『吾輩は猫である』を最近読んだ人?
- 数秒で読み終わる作品に興味がある人
オススメできない人
- 読み応えのある1冊を求めている人
- 『吾輩は猫である』を読んでいない人?
- また読み返したくなるような魅力ある1冊を求めている人
タイトル | 猫の広告文 |
著者 | 夏目 漱石 |
出版社 | 青空文庫 |
『女体』芥川 龍之介
彼の行く手には、一座の高い山があった。
芥川 龍之介『女体』青空文庫,1998年,位置№16
芥川さんが日常の中でそういったことを思ったことがあったのだろうなと感じることになった短編でした。
そういった人があり、大切に思っていたのなら、最期まで添い遂げるような選択もあったのではないかと。
芥川さんの人生の終わりを思い、少しばかりの寂しさ、勿体なさを覚えもしました。
オススメできる人
- 愛する女性がいる人
- 短編作品を求めている人
- 日常にある何気ない美しさにスポットを当てた作品に興味がある人
オススメできない人
- 年若い人
- 長編の文章を欲している人
- セクシャルさを感じる描写は苦手な人
タイトル | 女体 |
著者 | 芥川 龍之介 |
出版社 | 青空文庫 |
『酒の追憶』太宰 治
「いや、いけません。ウイスキイがまだ少し残っている。」
太宰 治『酒の追憶』青空文庫,2000年,位置№113(kindle版)
お酒というものは、いつの世も変わらないようで。
ほどほどに飲むのがやはり肝要。
とはいえ、そう分かってはいても、中々難しいこともあるようで。
太宰治という文豪が、そこらを歩く酔っぱらいと同じような状況に陥っていたという事実。
どこか親近感を覚える、身近に感じられる1冊でした。
オススメできる人
- お酒が好きな人
- サクッと読める作品を求めている人
- 太宰治の人間味を感じられる作品を読んでみたい人
オススメできない人
- お酒は好かない人
- 私小説は求めていない人
- 長編作品を求めている人
タイトル | 酒の追憶 |
著者 | 太宰 治 |
出版社 | 青空文庫 |
『織田君の死』太宰 治
織田君を殺したのは、お前じゃないか。
太宰治『織田君の死』青空文庫,2004年,位置№17(kindle版)
そう親交のあるわけではない誰かに「よくやった」と言ってもらえる、感じてもらえる人生とはどういったものであったのか。
織田 作之助さんの本を手に取ってみたくなる短編でした。
オススメできる人
- 短編作品を求めている人
- 読んでしまう文章を求めている人
- 創作に命を賭していたことを感じさせられる文章に興味がある人
オススメできない人
- 人の死が絡む話は不得手な人
- 最近のタイトルを読みたい人
- すぐに読了してしまう本は求めていない人
タイトル | 織田君の死 |
著者 | 太宰 治 |
出版社 | 青空文庫 |
『ピアノ』芥川 龍之介
すると突然聞えたのは誰かのピアノを打つた音だつた。
芥川 龍之介『ピアノ』青空文庫,2002年,位置№11(kindle版)
こういった物語をどのようにして思いつくのか。
実際に似たような状況に遭遇したことがあるのか。
もしくは全てが空想の中から生まれるのか。
作家さんの頭の中を覗いてみたいと思った1冊でした。
オススメできる人
- 短編作品を好む人
- 情景が思い浮かぶ本が好きな人
- 日常の一コマを切り取ったような作品に惹かれる人
オススメできない人
- 長編作品を欲している人
- ワクワクドキドキする物語を求めている人
- 少しばかりでも怖気を覚える作品は苦手な人
タイトル | ピアノ |
著者 | 芥川 龍之介 |
出版社 | 青空文庫 |
『納豆の茶漬け』北大路 魯山人
この糸を出せば出すほど納豆は美味くなるのであるから、不精をしないで、また手間を 惜しまず、極力ねりかえすべきである。
北大路 魯山人『納豆の茶漬け』青空文庫,2012年,位置№8(kindle版)
納豆と煎茶をスーパーに調達しに行きたくなる1冊。
果たしてどんな味がするのやら。
オススメできる人
- 料理系の話が好きな人
- 短い文章を求めている人
- 北大路 魯山人さんの文章に興味がある人
オススメできない人
- 納豆が嫌いな人
- 1冊の本を長く楽しみたい人
- お腹が空く作品は求めていない人
タイトル | 納豆の茶漬け |
著者 | 北大路 魯山人 |
出版社 | 青空文庫 |
『領民0人スタートの辺境領主様 VI 蒼穹の狩人』風楼
全ての命に意味があり、全ての命は大事なもので、そこに優劣は無い……無いからこそ敬意と感謝を忘れてはいけない。
風楼『領民0人スタートの辺境領主様 VI 蒼穹の狩人』アース・スター エンターテイメント,2021年,p.27(kindle版)
きっと作者さんの頭の中にはこの物語がしっかりと流れているんだろうな、とそう思えるシリーズ。
それほどに誰かの真似事でない、オリジナリティ溢れたストーリーが存在します。
ワンパターンなよくある展開に飽きてしまった方にオススメです。
オススメできる人
- 唯一無二の物語を求めている人
- 楽しく読めるシリーズを探している人
- 続きを思わず求めたくなるような本を欲している人
オススメできない人
- ファンタジー要素溢れる作品は苦手な人
- リアルな日常を描いた作品を読みたい気分の人
- 苦渋、苦境に満ちた苦々しい物語を求めている人
タイトル | 領民0人スタートの辺境領主様 VI 蒼穹の狩人 |
著者 | 風楼 |
出版社 | アース・スター エンターテイメント |
『領民0人スタートの辺境領主様 VII 旅宿の香風』風楼
「ああ、よく似合うよ、すごく綺麗だと思う」
風楼『領民0人スタートの辺境領主様 VII 旅宿の香風』アース・スター エンターテイメント,2022年,p.226(kindle版)
遠からずアニメ化するだろう。
そう断言してもいいほどに素晴らしい作品。
魅力的な描き方の出来る制作会社さんが請け負ってくれることを願うばかりです。
作画崩壊や残念なオリジナル展開にだけはなりませんように。
オススメできる人
- ファンタジーな世界を舞台にした物語が好きな人
- 続きを求めずにはいられない面白い作品を探している人
- いつかアニメ化した際「前々から読んでて~」をしたい人
オススメできない人
- フィクションが読みたい気分の人
- 主人公が若くない物語は苦手な人
- 平和なストーリーを求めていない人
タイトル | 領民0人スタートの辺境領主様 VII 旅宿の香風 |
著者 | 風楼 |
出版社 | アース・スター エンターテイメント |
『羅生門の後に』芥川 龍之介
そうして、その初号に載った「鼻」を、夏目先生に、手紙で褒めて頂いた。
芥川 龍之介『羅生門の後に』青空文庫,1988年,位置№24(kindle版)
こういったエッセイ系統の古い本を読み、どこかで見知った名前が実際に出てくると思うことが1つ。
それは「ああ、この人たちは確かに生きていたんだ」ということです。
自らの足で歩み、自らの手によって物語を創作していた。
彼ら彼女らなりの生活を営んでいたんだなと、何か不思議な気持ちを覚えた1冊でした。
オススメできる人
- 短い作品を好む人
- エッセイ系統の本を求めている人
- 文豪の日常が透ける1冊を読んでみたい人
オススメできない人
- 物語作品を求めている人
- 長編の作品を読みたい気分の人
- 作者自身のことを知ってしまうような本は苦手な人
タイトル | 羅生門の後に |
著者 | 芥川 龍之介 |
出版社 | 青空文庫 |
『縊死体』夢野 久作
……それは紛う方ない私の死体であった。
夢野 久作『縊死体』青空文庫,2000年,位置№33
読んでいてふと脳裏に浮かんだのがアルベール・カミュの『異邦人』。
常人では理解が及ぶことのない殺人の動機という点で、想起したのかもしれません。
気になる方はぜひ。
オススメできる人
- 短い作品を求めている人
- サイコなホラーが好きな人
- 不可思議な現象が生じるお話を好む人
オススメできない人
- 人の死が絡む作品は苦手な人
- 少なくとも数百ページはある作品を求めている人
- あっという間に読み終えてしまう作品は求めていない人
タイトル | 縊死体 |
著者 | 夢野 久作 |
出版社 | 青空文庫 |
『辺境の老騎士2 新生の森』支援BIS
分からないからおもしろいのだ。分からないから、生きている、といえるのだ。
支援BIS『辺境の老騎士2 新生の森』KADOKAWA,2014年,p.156(kindle版)
人の想像に果てはないのかもしれないと思わせてくれる1冊です。
それほどにこの本には、独自の魅力ある世界が広がっています。
模倣でない唯一無二の物語を求めている方はぜひ手に取られてみてください。
オススメできる人
- お腹が空く料理描写が好きな人
- ワクワクが止まらない物語を求めている人
- こりゃあ名作だと感じずにはいられない作品に興味がある人
オススメできない人
- 現実に即した物語を好む人
- あまり本を読み慣れていない人
- 独自の固有名詞が出てくると混乱してしまう人
タイトル | 辺境の老騎士2 新生の森 |
著者 | 支援BIS |
出版社 | KADOKAWA |
『辺境の老騎士3 バルド・ローエンと王国の太子』支援BIS
今は生きていることが楽しい、ということである。
支援BIS『辺境の老騎士3 バルド・ローエンと王国の太子』KADOKAWA,2015年,p.309(kindle版)
質の高いファンタジー。
それを求めているなら、この本に手を伸ばさない理由はありません。
面白すぎる、好きすぎる。
ぜひ。
オススメできる人
- 伏線回収的展開が大好きな人
- ぐっと来る物語を求めている人
- アニメでこのシーンを見たい!と思える描写に巡り合ってみたい人
オススメできない人
- ダイエット中の人
- 読書を就寝前の時間に行う人
- 全巻揃えたいと思えてしまう物語に出会ってしまうのは金銭的にマズイ人
タイトル | 辺境の老騎士3 バルド・ローエンと王国の太子 |
著者 | 支援BIS |
出版社 | KADOKAWA |
『檸檬』梶井 基次郎
えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた。
梶井 基次郎『檸檬』青空文庫,1998年,p.2(kindle版)
それをやることによって生じる意味はこれといって無い。
けれど、なんだかその時それをすることに可笑しさを感じるから実行する。
そういった気分のときって時折ないでしょうか。
私は頻繁にではないですが、不意に不可思議な意欲が沸いて、何かに取り組むことがあります。
それと似たような感触を、この本を読み返す度に感じるのですが、みなさんはどうでしょうか。
オススメできる人
- 『文豪ストレイドッグス』が好きな人
- 情景がありありと思い浮かぶ優れた文章を読みたい気分の人
- するするといつの間にか読み進めてしまう文章を求めている人
オススメできない人
- 短編作品を求めていない人
- ファンタジー作品などを読みたい気持ちな人
- 自らがこの世に生まれ落ちるより以前の本はどうにも性に合わない人
タイトル | 檸檬 |
著者 | 梶井 基次郎 |
出版社 | 青空文庫 |
『食物として』芥川 龍之介
僕はこの方言を思ひ出すたびに、自然と僕の友達を食物として、見るやうになつてゐる。
芥川 龍之介『食物として』青空文庫,2007年,位置№5(kindle版)
ちかごろ隆盛を誇るAI。
数年前からは考えられないほどに様々な分野に利用されることなりました。
それは、文章においても例外ではなく。
実際、私も興味本位でChatGPTを触ってみたことがありますが、破綻の無い文章。
それを形作ることはとても容易なことでした。
しかし、人間の思考に不意に訪れる突飛な発想。
そういったものについては、少なくともしばらくの期間は、侵されることはないのかもしれない。
そういったことを思った1冊でした。
オススメできる人
- 短編作品を好む人
- 人の発想の可能性を感じたい人
- 様々な作家さんの名前が出てくる作品が好きな人
オススメできない人
- 物語を読みたい人
- 最近の本を求めている人
- 長く1冊の本を読んでいたい気分の人
タイトル | 食物として |
著者 | 芥川 龍之介 |
出版社 | 青空文庫 |
『愛』岡本 かの子
愛ということばは、いつから人間の社会に発生したものでしょう。
岡本 かの子『愛』青空文庫,2004年,位置№2(kindle版)
このお話はどう捉えればよいのでしょう。
好きな人に出会ったときの、何とも表現しづらい喜びを浮遊感を焦燥感を、思うがままに書き綴っている。
と、そのように直接的な形で受け止めてしまって問題ないのか。
著者と同姓の女性であれば、また受け取り方が違ったりすることもあるのでしょうか。
また別の著作に手を伸ばしてみたくなるお話でした。
オススメできる人
- 恋をしたい人
- 愛を知りたい人
- 好きな人がいる人
オススメできない人
- 昔の本は不得手な人
- 長編作品を求めている人
- 恋だの愛だのという事柄とは距離を置きたい人
タイトル | 愛 |
著者 | 岡本 かの子 |
出版社 | 青空文庫 |
『英雄の器』芥川 龍之介
「何しろ項羽と云う男は、英雄の器じゃないですな。」
芥川 龍之介『英雄の器』青空文庫,1998年,位置№2(kindle版)
項羽であったり、劉邦であったりといった有名の将の名前が出てくる1冊です。
『三国志』を読んだことのある人、好きな人はより楽しめる短編なのかもしれません。
オススメできる人
- 短編作品を好む人
- 『三国志』が好きな人?
- 項羽や劉邦に詳しい人?
オススメできない人
- 長編の作品を求めている人
- 『三国志』をよく知らない人?
- 周辺知識を必要とする本は求めていない人
タイトル | 英雄の器 |
著者 | 芥川 龍之介 |
出版社 | 青空文庫 |
『辺境の老騎士 IV バルド・ローエンと不死の将軍』支援BIS
いつしかバルドも身を震わせ、荒い息をはいていた。鼻の古傷が、焼け付くようにうずく。
支援BIS『辺境の老騎士 IV バルド・ローエンと不死の将軍』KADOKAWA,2019年,p.125(kindle版)
物語が動く、とはこういった事を指すのだな、と感じる1冊でした。
激闘、怒涛の展開を感じたい方はぜひご一読を。
オススメできる人
- 戦闘シーンが好きな人
- 熱い展開を求めている人
- 「一連の動きをアニメーションで見たい!」と思える作品に出会いたい人
オススメできない人
- 平和なお話を読みたい人
- 暗雲漂う不穏な展開は苦手な人
- ライトに読める作品を求めている人
タイトル | 辺境の老騎士 IV バルド・ローエンと不死の将軍 |
著者 | 支援BIS |
出版社 | KADOKAWA |
『蒼穹』梶井 基次郎
湧き出て来る雲は見る見る日に輝いた巨大な姿を空のなかへ拡げるのであった。
梶井 基次郎『蒼穹』青空文庫,1998年,位置№33(kindle版)
風景というものは時代を経るにつれ、変化していきます。
山や森は切り開かれ、新しく人工物が建つ。
人間の生活領域の拡大に伴うものですから、何か寂しい気持ちを感じるものの、仕方ないと気持ちを落ち着かせるしかありません。
けれど、その光景を目にすることが出来ない、これからを生きる人たちのことを考えると少し勿体なさのような気持ちを覚えました。
彼ら、彼女らはそれらを目にすることの無いままに日々を歩む。
そこから生じる心の揺れ動きを知らないままに。
この短編を読み、考えたことはそういったことでした。
なんとも時間の経過は残酷なものです。
オススメできる人
- 短編を求めている人
- どこか郷愁を感じる文章を読んでみたい人
- 情景が浮かぶ、優れた描写を欲している人
オススメできない人
- 古い作品は不得手な人
- 長く読める1冊が好きな人
- 手に汗握る作品を求めている人
タイトル | 蒼穹 |
著者 | 梶井 基次郎 |
出版社 | 青空文庫 |
『最初の苦悩』フランツ・カフカ
「このたった一本の綱につかまるだけで――どうしておれは生きられるだろう!」
フランツ・カフカ『最初の苦悩』青空文庫,2010年,位置№5(kindle版)
悩み。
それはどんな人間であれ、尽きることのない厄介な問題。
この物語に登場するあるブランコ乗りにとっても、それは例外ではなく……。
世に広く知られた『変身』以外にも、興味深い作品があること教えてくれた短編でした。
オススメできる人
- 短編作品を読みたい気分の人
- フランツ・カフカの作品に興味がある人
- 「休日の心静かな午後にでも読むと良さそう」な本を読んでみたい人
オススメできない人
- メジャーなタイトルを求めている人
- 活力を与えてくれる作品を欲している人
- どこか陰鬱な雰囲気の作品を今は求めていない人
タイトル | 最初の苦悩 |
著者 | フランツ・カフカ |
出版社 | 青空文庫 |
『妖怪年代記』泉 鏡花
竹と竹との隙間を行くは、篠突く雨の間を潜りて濡れまじとするの難きに肖たり。
泉 鏡花『妖怪年代記』青空文庫,2006年,位置№248(kindle版)
泉 鏡花さん、といえば幻想文学。
そんな印象が強くあったのですが、この作品には中々におぞましい描写が存在しました。
思わず顔をしかめてしまうような、そんなシーンが。
優れた作家さんは「様々な形の物語を書くことが出来るのだな」と改めて感じることとなった作品でした。
オススメできる人
- 怪談が好きな人
- 情景が自然と思い浮かぶ文章を求めている人
- 「たまには古い時代の本を読んでみるか」という気分の人
オススメできない人
- 昔の文章を読み解くことが不得手な人
- 夜、トイレに行くのが億劫になる可能性のある作品は求めていない人
- 中高生あたりで学んだ古文などの内容がまるきり飛んでしまっている人
タイトル | 妖怪年代記 |
著者 | 泉 鏡花 |
出版社 | 青空文庫 |
最後に
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今、この文章を書いているのは1月の7日。
序文を書いたのが、文面を見るに、11月のようですから、随分と時を経てしまいました。
ただ、そのおかげもあってか、「366冊読む」という目標はなんとか達成。
空いた時間を読書に傾注する作戦が功を奏したようです。
そのために、更新は疎かになってしまいましたが……。
また、タイミングを見計らって、残りの数か月分も書いていく所存ですので、よろしければご覧ください。
では、次回の記事で。